Phosphor「明けの明星」


焦燥感の有った20代の頃の話。

夜の3時半頃、眠つけずに、バイクを海まで走らせた。
近くの海岸にバイクを止めて、砂浜の上で一人座って海と空を眺めていた。

4時半過ぎ。やっと空が白んでくる時刻。
たまに犬の散歩の人が通るくらいで辺りには人影はない。

見上げた空には「明けの明星」が有った。

夜明け前だが、空は結構明るくなってきたにも関わらず、その星はひときわ明るく輝いていた。

次第に夜明けの力強いオレンジ色の空に変わっていく。

そのとき、海岸からそそり立つ崖にある森も植物も周りにいた鳥たちも、
一瞬、同じ星を見ているような感じがした。

「夜明けが来る」という合図を海・森・風・岩・植物・鳥・動物、その場にいた全てのものと確認しあうかのように。

地球との一体感を強く感じ、訳もなく涙が零れ落ちた。

「明けの明星」は金星で、一等星の170倍も明るさが有る。
その明るさゆえ陽光の中でも見る事が出来る。
希望の星なのだ。

釈迦は「明けの明星」を見て悟りを開いたと言われている。

ギリシャでは、「明けの明星」の美しさが、美と愛の女神アフロディテと結び付けられ、そのローマ名ウェヌス(ヴィーナス)が金星を指す名前となった。

キリスト教では、ラテン語で「光を掲げる者」「明けの明星」を意味する言葉として、「ルシフェル」(Lucifer)(後の地獄の闇に堕とされる堕天使の総帥=魔王)とも名づけられている。

他にも様々な伝説が世界の各地域や文化に残されているそうだ。

この「明けの明星」を見ていると、なぜか祈りたくなる。
今「生きている」という感覚が増すためだろうか。

家族、兄弟、友人、師、まだ見ぬ人に始まり、川、海、風、大地、草原、へと続き、この地球に存在するあらゆるものに祈りを捧げたくなる。

日本には八百万の神がいるとも言われているが、その神、精霊全てに対しても。

悲しいことだが、今、この世界は変わって来ている。
凄惨な天災、戦争、殺人・・・暗いニュースが後を絶たない。

暗澹たる気持ちになってくる。

何も出来ないが、祈ることだけは出来る。

音楽は「祈り」から始まった。
キリスト教の賛美歌、お祭で打ち鳴らす太鼓…

「祈り」は、世界各地に古来からある人間共通の想いと考える。

「祈り」の形は人それぞれ違うと思うが、その力は信じたい。
その「祈り」をアクセサリーで表現できればと思い、
ブランド化することにした。